「まちの元気」レポート
商店街を歩こう
全国各地の「商店街」で実施されている取組みや各種課題、さらに関連ニュースなどを
独自の観点から勝手にレポート。商店街と元気のある街づくりの“今”に迫ります。
三種の神器:その1
2013年10月11日
カテゴリー:商店街を歩こう
ブログ「商店街を歩こう」では、商店街で実施される取り組みや様々な課題、関連ニュースなどについて独自の観点から紹介していきます。
昨今、商店街活性化に関して「三種の神器」と呼ばれる施策があります。
まちの複数の飲食店をめぐり、来街者と店とまちをつなげる「バル」、たった100円で高い集客を実現できる「100円商店街」、ゼミナール形式で店のファンづくりを促進する「まちゼミ」の3つ。
レポート第1回目の今回はこの三種の神器から「バル」事業をテーマにお伝えします。
近ごろ、飲食店でも多く見られる「バル」。お酒と小皿料理を楽しみながら、お店をはしごするというスペイン発祥文化のひとつです。商店街でのバルイベントはこれを応用。複数枚つづりのチケットを購入した参加者が、参加店舗にて「ドリンク1杯+おつまみ1品」を飲み歩き・食べ歩きができる仕組みになっています。2004年に函館の商店街で始まり、今では全国100都市近くで開催されています。
なんといっても特長は、参加したお客さま・店舗・商店街の三者にメリットがあること。新しいお店や普段利用しないお店というのは、気になっていてもなかなか入りづらいもの。「バル」イベントなら、手軽に店の味や雰囲気を楽しむことができます。一度に色々なお店をハシゴできるのもお得に感じられるポイント。
店舗にとっては、自店の認知度アップが期待でき、再来店のきっかけをつくることもできます。また、チケットの前売り販売から客数・数量が予測でき、食材などの無駄なロスが発生しにくくなります。
なによりも参加者が店舗を回遊することで、商店街全体としてのにぎわいをつくることができます。チケットの売上金額を用いて運営することで、国や行政の補助金に頼ることなく継続的な開催が可能となります。お酒のメーカーやタクシー業界など協賛企業を集めやすいこともメリットのひとつ。ゆくゆくは加盟店舗の増加や活性化に向けた若手商店主の積極的な参画なども期待できます。
ここで、実際の事例をいくつかご紹介。
(1)発祥の地・北海道函館市
伝統的建造物が建ち並ぶ北海道遺産指定地区でもある函館市西部。
同地区で開催された「スペインフォーラム」という事業のひとつとして「バル」イベントがスタート。終了直後から参加者の強い要望があり、継続的に実施され全国的なモデルケースとなりました。中小企業庁「がんばる商店街77選」にも取り上げられています。
参考URL:
http://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/shoutengai77sen/idea/1hokkaido/2_hokkaido_02.html
(2)成功例・兵庫県伊丹市
函館に続き、2009年に実施。
きっかけは、平常時の集客・売上が伸び悩み、瞬発性の高いイベントに変わる施策を検討していたこと。加えて、伊丹という土地が「清酒発祥の地」であり、飲食店の多い土地柄だったことから「バル」イベントをスタートさせたそうです。
特徴のひとつは、市民による自主的な運営参加。ボランティアで協力店舗への声がけなどをしており、より持続性の高いイベントに昇華させることができます。また音楽イベントを同時開催し、ただ成功例を真似るだけではないオリジナリティが感じられます。
今では「伊丹の清酒の普及の促進に関する条例」なる市条例が施行されているそう。
参考URL:
http://itami-tc.com/bar/
(3)間もなく初開催・東京 五反田
JR五反田駅西口に広がる五反田商店街では、来たる11月23日(土)に「五反田肉祭バルフェスタ」が開催されます。
「五反田の名物をつくろう!」をきっかけに、元々はその名の通り肉料理を無料で配布するのがメインイベント。五反田にオフィスを構える「浅井企画」所属芸人によるお笑いライブや、東日本大震災以降は復興支援として福島牛などをふるまっていました。「バル」イベントに衣替えする今年もミスコンテストの同時開催など、サブメニューも充実しています。
お時間ある方は、ぜひ行かれてみてはいかがでしょう?
参考URL:
http://www.nikumatsuri.com
「バル」イベントを実施するうえでのポイントは3つ。
【オリジナリティ】
紹介した実例もそうですが、いかにしてその商店街「ならでは」の独自性を盛り込むことが必要です。そのためには周辺リソース(企業・名産・名所など)の活用や飲食店以外の店舗の参加などが挙げられます。
【参加店舗の誘致】
実施にあたり、いちばんの難関は参加店舗を集めることではないでしょうか。運営負荷が重くならないように初期段階で規模感を設定することなどが大切でしょう。
【再来店促進】
各個店の問題になってしまいますが、イベント終了後のリピーター率の増加がなにより大事。「寿司5貫+ドリンク1杯」のように、お得なセットを販売することでイベント時に相当数の来店があったにも関わらず、再来店につながらない…などはよく聞く話。個店販売力アップのための勉強会やセミナーなどを実施するなど、インナー側のフォローアップも進めていくことでさらなる活性化につながるのではないでしょうか。
(画像出典元:品川区商店街連合会)
個店が強くなれば、商店街も賑わっていく…。
駅前商店街など、飲食店が多く連ねる立地では有効な施策といえます。